用語解説
井上喜久子のジレンマ

大層な題ですけど、たいしたことはないです。
井上喜久子さんといえば、大人の女性、それも俗に“お姉さん”なキャラを演じさせれば天下一品の演技をなさる方で、
ベルダンディ(ああっ 女神様!)
天道かすみ(らんま1/2)
エレクトラ(ふしぎの海のナディア)
最近では、
メリッサ(魔法戦士リウイ)
萩子(エンジェリックレイヤー)
など、挙げれば数限りなくあるカテゴリーに分類される役柄をえんじられてます。

しかし、2000年『真・女神転生 デビチル』というアニメで、井上喜久子さんが演じられた役は……クール、ケルベロスのクール。
見かけは犬で、実際には幼いケルベロス(?)で、その声は少年声。
イメージ的にいままで井上喜久子さんの演じられたキャラとはかなりギャップがあり、意外な感じでした。
しかし、その演技は十二分なものを表現されています。
私がこのアニメを初めて見たときに思ったのは、『なぜ今まで(キャリア10年)この系統の役を演じられてないか?』
ということでした。
ここからは思い込みに近いのかもしれませんが、やはりキャスティングする側(制作者)にも(声優に関して)一定のイメージがあるのでは?
ということです。
役の決定までの過程を詳しく知ってるわけではないので、あまり断言はできないんですけど……。

そこで、なにがジレンマかというと、
“ある特定のキャラクターがいるとき、その役を獲得するのにこれまで演じたキャラのイメージが強いことは有利”
という反面
“それ以外の(特にかけ離れた役)を獲得するときに、不利になりかねない”
……厳密にいえば、これまで演じていない、ということが不利に働く、ということです、

そう考えないと、いままで井上喜久子さんに少年役がなかった説明にならないかな? と思ったのです。
私がキャスティングを考えるとしても、井上さんに少年役というのはちょっと選択肢になかったですね。
デビチルのスタッフの英断に感謝。

一度でもサンプルができれば、かなりジレンマは緩和されます。
2001年、井上喜久子さんはキャプテン翼(ROAD TO 2002版)の少年時代の翼役を獲得しました。
しかも、なかなかの好演。これからはもっといろいろな少年役がラインナップされていくことでしょう。

さて、もちろんこうした“イメージギャップによる役柄の偏り”は井上さん固有のものではありません。

例えば、かないみかさん、西村ちなみさん、西原久美子さん、こおろぎさとみさん……ちょっと羅列してみました。
上記の四人はどちらかというと幼い、小さな女の子を得意として、演じてきたキャラクターもその系統が多いのですが、
意外に大人の女性を演じられたときもかなりいい演技をされてます。なかなか探すのが大変ですけど。

このイメージギャップはなかなか解消されない(声優は声のみの演技だけに、イメージ的なものがついてまわるので)ですけど、
演技の幅のある方にはいろいろな役を演じて欲しいものです。

追記:このジレンマは、“演じられるけど、その役がまわってこない”という意味あいをもたせてるつもりです。
演技の幅が狭い人(<これも難しい。このジレンマで、そもそも才能を発揮させてもらえない人もまざってしまうので)は対象外です。
……最近の若い“幼女系”声優さんとか(爆)

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